【家計】給料が1万円あがっても手取りは「5,576円」しか増えないって本当??
どうも。サラリーマンFPのひろのりです。
今日は給料の計算についてのお話です。
給与明細、毎月給料日前にはもらっていると思いますが、なんだかごちゃごちゃ書いてあってよくわからないですよね。
とりあえず、額面の給料額から、年金とか税金とかたくさん引かれて、手取りはこんなに少なくなっちゃうんだ、、、って思いませんか?
私は正直思ってました。
じゃあ具体的な計算方法ってどうなっているの?という話は、とてもめんどくさいので給与ソフトにでも任せておくとして、今回はこの記事
にならって給料が1万円増えたらどうなんの?ってことを計算してみたいと思います。
ちなみに「5,576円」ではないですよ。
この記事書いた人はもちろんですが、このまま掲載しちゃった「マネーの達人」さんも反省したほうがいいと思います。記事チェックしないんでしょうか?
だって1万円増えて5,576円ってことは、単純に45%ほどが天引きされることになりますが、いくら何でも一般庶民レベルの年収でそんなことはないって感覚的にわからないもんですかね???
目次
給与計算の方法
まずは給与から天引きされるものは何があるのか、ということを見ていきましょう。
ということで、大まかに言えばこの3つですね。
そして、社会保険料の中には、厚生年金保険料と健康保険料、介護保険料(40歳以上)、雇用保険料(記事では計算されていません)がありますよ。
社会保険料の計算
記事中一番間違いが少なかった社会保険料から行ってみましょう。
1万円 ×(18.3% × 1/2 + 10.17% × 1/2)= 1424.5円
厚生年金保険料率は全国一律18.3%です。
健康保険料率は保険者によって差があるのですが、協会けんぽ(大阪府)の10.17%をひとまず採用しました。
この保険料は雇用者との折半になるので、会社員が実際に天引きされるのはその半分となります。
※40歳以上の人はさらに介護保険料を支払わなければなりません。
厚生年金保険料18.3%と健康保険料10.17%を労使折半していきますので考え方はOKですね。
このモデルでは30代のため介護保険料もありません。
とはいえツッコミどころもあります。
雇用保険料はどこへ?
雇用保険がないんですよね。まあ料率は0.3%(0.6%が事業主負担で計0.9%)ですから影響は少ないですけど。
1万円×0.3%=30円
これは追加しておかないといけません。
厳密には厚生年金と健康保険も計算の仕方が違う
実は厚生年金、健康保険とも計算方法が若干違います。
記事にあるように額面に直接保険料率をかけて計算するわけではなく、等級表に応じて額が決められています。
例えば、額面40万円であれば、39万5千円以上42万5千円未満という等級になりますので、この範囲であれば自己負担は「37,515円」で変わりません。
40万円から41万円に給料が増えても年金保険の額は変わらないということです。
逆に、42万円から43万円に増えると「37,515円」が「40,260円」に一気に増えるため、純粋に保険料率をかける計算方法とは若干ズレが出ますね。
これは具体的にモデルケースを決める必要が出てくるため、省略は仕方ないとは思いますが、一言も触れていないのはちょっとな、、、と思ってしまいますね。
所得税の計算
次、所得税行きましょう。
1万円 × 20% = 2000円
所得税は累進課税です。
ただし、総収入額にそのまま課税されるわけではありません。
給与所得控除や扶養控除など諸々の控除をへて、年収500万円を少し超えるくらい(男性会社員の平均年収)なら、所得税率は10%ゾーンにとどまるか20%ゾーンに少しだけ入るかくらいでしょう。
年収1,000万円というような人でも、所得税率は23%ゾーンにとどまります。
夫は出世をもくろんでいるので、20%ゾーンに少し入るとして考えました。
※計算の簡略化のため、復興特別所得税を無視しています。
記述は正しいんです。その通りなんです。
間違ってるのは最初の式
1万円 × 20% = 2000円
これです。自分で「ただし、総収入額にそのまま課税されるわけではありません」って書いてるのに、計算は思いっきり総収入額にそのまま課税するようにしてますけど、、、
じゃあどうなるの?という話。2点、考慮しなくてはいけません。
給与所得控除
こんな感じで、給料に対して所得控除がかかります。
給与などの収入額 | 給与所得控除額 |
---|---|
162万5,000円以下 | 65万円 |
162万5,000円超〜180万円以下 | 収入金額 × 40% |
180万円超〜360万円以下 | 収入金額 × 30% + 18万円 |
360万円超〜660万円以下 | 収入金額 × 20% + 54万円 |
660万円超〜1,000万円以下 | 収入金額 × 10% + 120万円 |
1,000万円超 | 220万円 |
例えば年収600万円の人で計算すると、
600万円×20%+54万円=174万円が控除されます。
月1万円増えた場合は、年収は12万円増えます。
控除額は 612万円×20%+54万円=176.4万円となります。
所得税は控除した後で税率を掛けますので、次のように計算します。
(600万円-174万円)×20%=85.2万円(月7.1万円)
(612万円-176.4万円)×20%=87.12万円(月7.26万円)
ということで、給与控除を考慮すると、ひと月に増える所得税は
7.26万円-7.1万円=1,600円
ということになりますね。
社会保険料控除
次に考慮しなくてはいけないのは、社会保険料控除です。
これは、厚生年金や健康保険などの分を控除すること。
つまり、最初に計算した社会保険料の増額分は控除されます。
厚生年金と健康保険で月1424.5円、雇用保険が月30円増えます。
年間では(1424.5+30)×12=17,454円さらに控除されることになります。
(612万円-176.4万円-17,454円)×20%=867,709.2円(月72,309.1円)
600万円との差額は 72309.1円-71000円=1309.1円となります。
給料が1万円上がると所得税は約1309円上がる、ということです。
そのまま20%をかけて2000円上がるわけじゃないのです。
住民税の計算
住民税も所得税と計算方法は同じです。
本当は基礎控除や配偶者控除などの控除額が異なる部分があるため、調整控除という作業を行うのですが、これは世帯モデルなどを具体的に決めないと計算できないので省略します。
あとは税率が10%(ほぼ全国統一ですが神奈川県などごくわずかに例外があります。)として計算をします。
(600万円-174万円)×10%=42.6万円(月3.55万円)
(612万円-176.4万円-17,454円)×10%=433,854.6円(月36154.55円)
差額は36154.55円-35500円=654.55円ですから、住民税は約655円上がるということですね。
こちらも、記事のように1万×10%=1000円上がるわけではありません。
1万円給料が上がると手取りはいくら上がるのか?
これまでの計算を合わせてみましょう。
給料ー(社会保険料+所得税+住民税)となります。
1万円-(1454.5+1309.1+654.55)=3418.15円
ということで額面年収600万円の人の給料が1万円上がると、3,418円天引きされ、6,592円給料が上がることになります。
これでも給料が増えた分 の約1/3は天引きされるので、厳しいといえば厳しいですが、さすがに5,576円よりはずいぶんマシに感じるのではないでしょうか。
記事後半のワークライフバランス的なご意見の部分にはあえて触れませんが、明らかな間違いを前提に話を進めるのはいけないと思いますよ。
まとめ
1万円昇給しても6,592円しか手取りがあがらない、と思う方もいるかもしれません。
しかし、1万円昇給しなければその先5万円、10万円の昇給はあり得ません。
そして、しかるべき時期に昇進しないと後で昇進したくてもできない企業も多いです。
過去記事でも書きましたが、節約のみで家計を改善しようとしても、収入額以上には使えるお金が増えないという限界があります。
なのでワークライフバランスは前提とはなりますが、基本的には昇給のチャンスがあるなら乗っておくほうがいいのかな、と思ったりします。
蛇足ですが、そんなに手取りが減ることが嫌であれば、同じ1万円稼ぐなら専業主婦の方がパートに出るほうが手取りが多く残りますね。
そんな方法も案外必要かもしれません。
最後までお読みいただきありがとうございました。この記事も、少しでも参考にしていただければ幸いです。